ぱるばか日誌 2017
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春画展に行く
 永青文庫の春画展に行く。
 まあ、オレも世界中でミュージアムやギャラリーを見て回っているが、こんなのはまことに珍しい。
 滅多に見られるもんじゃあるまいから、キミも見とくといい。
 かなり洗練されているから、女のキミでも大丈夫。
 実際、平日であるにもかかわらず、会場は老若男女、あらゆる階層の人々で満杯だ。

 これに比肩するものと言えば、ヒンドゥー寺院の壁面に彫られているミトゥナ(媾合)像くらいなもんだろうな。
 それについては5年前の記事「古都のミトゥナ」を参照
 
 ともあれ、このような美術作品を生み出した国は他にあるまい。
 これだけ見てれば、「日本人ってきっと豊かな性生活を送っているに違いない」という印象を受けるかもしれない。
 しかし、それは、往々にして、逆だったりするのだ。

 それで思い出すのが、チト古いが、2005年にDurex社の実施した調査。「世界各国のセックス頻度と性生活満足度」。
 主要41カ国を調べたものだが、これを見ると、頻度はダントツの最下位、満足度もハナの差で中国に次いで下から二番目という状態。
 つまり日本ほど性生活の豊かでない国もないのだ。
 このような世界最貧の性生活と、世界最高の春画が、いったいどのように結びつくのか。

 日本人って、あまりセクシーじゃないのかもな。
 それで、放っておくと、セックスレスとか、少子化とかに陥ってしまう。
 それで春画が必要になったのかな。
中国国家博物館
北京にある博物館。
日本で言えば東京国立博物館に相当するであろう。
天安門広場に面した巨大な構造物。
場所柄や名称からして多分に政治的な意図も帯びているような気がするが、ま、それもひとつの見所かも。

北京にある博物館と言えば故宮博物館を思い出すが、あれは基本的に宮廷の収蔵品。
こちらの博物館は出土品が中心だ。(常設展示の古代中国部門)
いみじくも北京の名を冠した旧石器時代の原人化石(模造)から、殷周春秋戦国の青銅器や玉器、三星堆の人面、秦の兵馬俑など、国中から集めた国宝級の遺物がこれでもかというくらい多量に並んでいる。
漢代の展示も圧巻だ。古代日本の超有名な珍宝「漢委奴国王」、その金印の同類が二つもカジュアルに展示されていたり。(ま、胴元だしな)
陶俑や青銅器の造形も、ヤラレタってくらい見事。
二千年ほど前の作だ。美は時代や国家を超えていく。

唐代以降の特に磁器などは、故宮博物館や上海博物館に負ける。
高校などで習った中国史を遺物を通じて学び直すには好適だ。
新しくて清潔、入場無料なのも良い。
中国泥人博物館
 上海の西方、無錫(むしゃく)にいる。
 この街には中国泥人博物館というのがある。
 これはチト見逃せない。
 泥人とはすなわち、土人形だ。

 オレはどういうわけか、土人形が好きだ。
 古代ギリシアのタナグラ人形とか、日本の土雛とか。
 信州中野の土人形資料館はお気に入りスポットだ。
 ここ無錫の恵山地区は古くから泥人の産地として有名だという。
 良質な粘土が採れるからだ。
 そこで中国全土の土人形を集め、中国泥人博物館が作られた。
 設計は日本の隈研吾というくらいだから、かなりホンキの施設である。
 信州中野の十数倍はあるであろうスペースの中に、新石器時代の人面土器から兵馬俑、玩具、最近の作家作品まで、幅広く集めてある。

 色彩も派手な泥人に見入っていると、なぜか時間を忘れてしまう。
 見入りながら、なぜオレはこのようなものが好きなのだろうと、絶えず自問する。
 数時間自問した末に、ふと気づいたことがある。
 蓮華だ。
 インドで蓮の花は菩提の象徴とされる。
 泥の中から立ち上がって花を咲かせるからだ。
 泥人もまた同じだ。
 もとは泥だが、形を与えられ、乾かされ、目もあやな色を施される。
 落下すれば砕けてしまうはかない存在であることも、繊細な蓮華と同様だ。
 ただ、蓮華の中に泥はないけれども、泥人は内に泥を抱いたまま変容している。
 このあたりがいかにも人間的で、オレなんかは好きなわけだ。
クラゲの水族館
 庄内を訪ねた。山形県の日本海側だ。
 日本有数の穀倉地帯であるにもかかわらず、陸の孤島と言われるらしい。
 なるほど、新幹線は、南は新潟、東は山形、北は秋田までで、ここは空白。高速道路も通じていない。
 ただ、スクリーン上ではけっこう馴染みだったりするのだ。たとえば、おしんとか、おくりびととか、たそがれ清兵衛とか…。オレも庄内を舞台にした映画をかなり観ている。
 米のほか、だだちゃ豆とか、海産物とか、食い物も豊富。

 めったに来ない場所だからいろいろ訪ねてみたが、傑作のひとつが鶴岡市営の加茂水族館だろう。
 ここは最近テレビでもよく紹介されているのでご存知の向きも多かろうが、クラゲの展示が世界一なのだそうだ。
 元来はどこにでもありそうな海辺の小水族館で、90年代には入場者減少で閉鎖の危機に瀕したらしい。
 それがふとしたキッカケでクラゲの展示を開始し、メキメキと盛り返した。今年夏には隣接地に近代的な水族館を新築オープン。夏休みなどたいへんな賑わいだったという。昨日の土曜も臨時駐車場までほとんど満杯の状態で、館内はごったがえしていた。
 
 クラゲという着眼が良かった。
 日本には大都市・大資本をバックにした大きな水族館はいくらでもあるから、普通のことをしていたら地方の小水族館は生きてはいけないだろう。
 オレも水族館は嫌いではないからときどき訪ねたりするのだが、たとえば、日本を代表するひとつに三重県の鳥羽水族館がある。一日では見切れないほど多彩な展示の中で、印象に残ったひとつが、クラゲだったりするのだ。
 そもそもクラゲというのは邪魔者だ。盆を過ぎると海水浴場が閑散とするのもクラゲのせいだ。刺胞があるから海辺の民にとっては困った存在で、それをわざわざ展示しようとは普通思わないのだろう。ところが、オレみたいな山の人間には、それがかなり珍しかったりする。
 加茂水族館にも昔の名残で普通の魚類がいる。展示の半分くらいは魚じゃあるまいか。昨日は時間の関係もあり、そうしたものは一切無視して、ひたすらクラゲばかり見ていた。飽きないのだ、コレが。
 ここの見物のひとつがミズクラゲ。大水槽の中でゆったり回っている。同水族館で繁殖法を確立した看板クラゲだ。ちょっと美味しそうだったので、解説員のおじさんに「これ食べるんですか」と聞いてみたら、食材の豊かな庄内ではクラゲは食わんとのこと。
 その夜、宿の食事の片隅にクラゲが出た。鶴岡市のお達しでクラゲを一品出すことになっているという。加茂水族館から仕入れたというので、これはミズクラゲですかと聞くと、いえミズクラゲではなくて刺身クラゲです、だと。そんなクラゲは居なかったが…。
 ただ、種々の美味珍味に圧倒され、存在感は非常に希薄だった。やはり庄内でクラゲを食う必要はないようだ。