ぱるばか日誌 2017
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ヒマラヤのカッコウ
 すっかり夏のヒマラヤ山麓。
 今日は今年最高の33.6℃まで気温が上がっている。(14:53現在)

 朝、ジャングルから鳥の大きな鳴き声が聞こえてくる。
 声量からみて、カッコウの仲間だろう。
 おなじみIndian Cuckoo(セグロカッコウ)とは違う。
 3声で、音程で言うと、ミッミドという感じ。
 昔のテレビワイドショー主題歌にあった、「デュッデュワ パッパヤ」を想起させ、おかげでここ数日、「デュッデュワ パッパヤ」が頭の中を駆け巡っている。
 (セグロカッコウは『森の熊さん』)

 あまり派手に鳴くから、YouTubeで調べてみた。
 すると、英名、Large Hawk-cuckooというものらしい。
 日本語ではオオジュウイチ。あまり馴染みのない鳥ゆえ、和名もぱっとしない。
 ジュウイチと言えば、わが養沢の森にも来るし、その名の通り「ジューイチ」と鳴くんだが、この鳥はデュッデュワだからな。ぜんぜんオオジュウイチではない。
 そういえば先日、Himalayan Cuckooを耳にしたような…。ツツドリだ。
合掌の伝統
 両掌を合わせる作法。合掌。
 日本では主に神仏への帰依を表す。
 その起源はおそらくインドであろう。

 インドで合掌はanjali mudraと呼ばれ、やはり献身を表すムドラー(印相)であるらしい。
 このムドラーは、神仏のみならず、人間にも向けられる。
 日常の挨拶でも、お互い、この印を結ぶ。
 西洋的教育を受け握手に親しんでいる「現代的」インド人も、こちらが手を合わせると、条件反射で合掌を返してくる。
 ちょうど我々のお辞儀と同じく、彼らの心底に深く根ざしているのだ。

 どのくらい深いのかというと、首都デリーの国立博物館に最古の一例を見ることができる。
 同博物館の呼び物のひとつは、古代インダス文明の遺品だ。
 第一展示室の一隅に、同文明由来の小さな土人形が並んでいる。
 その中に「ヨガをする人」というのが二体あって、それが合掌している。
 合掌しているとヨガなのかイマイチわからぬが、紀元前2000ー27000年のものだ。
 つまりインドの地では四千年以上にもわたり、この印が結ばれてきたというわけ。

 それが仏教を通じて、日本などアジア諸地域に伝わったのだろう。
 だとしたら、合掌が日本に伝わったのは6世紀ごろということになる。およそ千四百年前だ。
 つまり彼の地ではその三倍以上の長きにわたり、合掌の伝統が続いてきたということになる。

 ラケッシュ君の姪っ子ナビア(二歳)も、ちいさな掌を合わせてオレに挨拶する。
 親がまず最初に教え込む仕草がコレなのかも。
 非常にカワイく映るから、生存にも有利に働くであろう。
 まだしばらく続くであろうな、この伝統は。
カッコウのいろいろ
カッコウワルツという曲がある。
キミも知っているであろう。
スウェーデン人の作品だそうだ。
これを聴くと、ヨーロッパでも日本でも、カッコウはカッコウと鳴くんだなと思う。

現在滞在中の北インド、ヒマラヤの麓でも、同じカッコウが鳴いている。
手許にある『Birds of India』という鳥類図鑑を見ると、カッコウの英名はEurasian CuckooないしCommon Cuckoo。
まんま、だ。

当地で珍しい鳴き声を聞く。
これもきっとカッコウ類だろうと、調べてみる。
鳴き声については、図鑑はあまり頼りにならない。
図鑑で目星をつけ、YouTubeであたるのだ。
結果、Indian Cuckooだと判明。これも、まんま、だ。
非常に特徴的な鳴き型で、4音符。音階で言うと、レドレド。
時によっては、『森の熊さん』の冒頭「ある〜ひ」にも聞こえる。

図鑑にはもうひとつ、Himalayan Cuckooというのがあった。
なんだろうと意気込んでYouTubeすると、なんのことはないツツドリであった。
ツツ、ツツ、ツツツツと鳴く。
当地ではまだ耳にしていない。
別名はOriental Cuckoo。
拙宅のある西多摩では毎年、今ごろ鳴いている。
新型インドビザ
 今、インド滞在中。
 オレなんか三年モノのビジネスビザを所持してるから良いものの、キミがちょっとインドへ…と思い立った時、面倒なのがビザだ。
 東日本人は東京のインドビザセンターに申請するんだけど、最近ウルサ型のインド人係員が立ちはだかり、泣かされる人もけっこういるらしい。
 今どき日本国民にビザを課する国ってのも珍しいが、ま、隣国Pからよくテロリストも侵入したりするから、しょーがないのか。

 東京ビザセンター抜きでインドに入国する手立てもある。
 ビザ・オンアライバル、すなわち空港発給ビザだ。デリーやムンバイなどインドの主要8空港で、到着時に審査・発給される。
 ただ、キミがインドの空港に着いたは良いが、もしも発給されなかったらどうなるか!?
 相手がインドだからな、そういう可能性もあるんじゃないか?
 というわけで、用心に越したことはないんだが、1年ほど前、友人がひとり果敢にもムンバイ空港でトライした。結果、無事取得できたみたい。ただ別室に呼ばれたりして面倒だったようだ。

 さて、インドビザセンターのHPによると、このたび、新型のアライバルビザが登場した。
 これは、前もってネット上で申請し、その上で、主要8空港でビザをもらう。
 
 ある友人が、先日、果敢にもトライした。
 ネット経由で必要情報とクレジットカード情報を送り、待つこと24時間。
 OKのメールが到来する。
 それを持ってインド航空でデリー空港へ到着すると…
 イミグレカウンターのいちばん先、誰もいない窓口へ赴くと、ほとんど何の手間も無く、スッとビザが発給されたそうだ。人々の列成す通常のイミグレ窓口よりよほど早かったみたい。
 ただ、料金は高い。六十数ドルだったというから、通常のビザ手数料よりかなり高額だ。
 それでも、ウチみたいな僻遠の地から東京・茗荷谷まで往復半日×二回よりは、良いかもな。
 
 
ガンガーなるわが奥津城
オレも仕事上、よくインドへ行くからな。
客死するっていう可能性もあるわけだ。
そこから遺骸を運んで来るのもホネだろう。
それで最終処理方針を決めておいた。

仕事先はウッタラカンド州にある。
同州は別名デーヴブーミと言って、「神の地」というほどの意味だ。
母なる河ガンガー(ガンジス)の上流を含むヒマラヤ地方を擁し、数々の聖地がある。

その聖地のひとつがデーヴプラヤグ。そこで二河が合流し、ガンガーが始まる。
河のほとりにはガート(焼き場)があり、死者は荼毘に付され、遺灰は河に流される。
それは古(いにしへ)からの習慣なので、日本みたいに散骨にウルサかったりはしない。
ウチのスタッフであるラケッシュの親たちは、デーヴプラヤグ近辺の村出身だ。
村人たちは皆、最後には同地のガートから送られる。

というわけで、オレがインドで死んだら、そんな村人たちと同じ扱いにしてもらうことにした。
デーヴプラヤグというのは、バラナシよりもずっと上流だ。
だから水も清く美しい。
やや冷たいけどな。
奥津城がガンガーって、ちと良くない?
インド人の数学力
インド人は数字に強いという伝説がある。
なんせ0を発見した人民だからな。
和算ならぬ印算という独特な算法があるのだ。

弊社スタッフ、ラケッシュ君に、タクシーを頼んだ。
午後5時によろしくと。
どうせ時間通りには来るまいと思っていたが、案の定、来ない。
その代わりにラケッシュ君が午後5時に部屋にやってきて、「20分後に来ます」と言う。
「じゃ、40分後か」とオレ。
「いえ、10分後と言われたので、20分後」とR君。
これが印算だ。

本当に5時20分に来るのかと注目していたら、来たのは5時30分だった。
やはり印算はインド人にも難しいらしい。
インドの電子レンジ
今、インド。
弊社スタッフR君の家に滞在中。
R君、リシケシの街にでかけ、電子レンジを買ってきた。
「200種類のインド料理ができるんだよ」と嬉しそうなR君。
メーカーはどこ?と聞くと、サムスンだと言う。
パナソニックとかないの?と聞くと、「ないなぁ…。あるのは、サムスンとか、LGとか、ワールプールとか」。
ワールプールは知らないが、前二者は韓国の会社だ。
インド料理200種が組み込まれてたら、そりゃ負けるだろ。パナも。(当家の冷蔵庫はパナ)
ま、電子レンジのインド料理はあんまり興味ないけどな。
キムチとかできたら嬉しいが。
スタッフの日本人女子は、ケーキを焼くとか言っている。
期待しないで待っていよう。
R君の妹(18歳)に聞いたら、サムスンがどこの国の会社か知らなかった。
さすがにインド製だとは思っていなかったようだが。
『インダス文明の謎』
 長田俊樹著。副題は『古代文明神話を見直す』。
 インダス文明と言えば、メソポタミア、エジプト、黄河に並ぶ古代「四大文明」だ。
 ただ、他の三大文明に比べると、やや影が薄い。
 著者は総合地球環境学研究所によるインダス・プロジェクトのリーダー。
 同プロジェクトは日本で初めてインダス文明の遺跡発掘を手懸けている。

 副題に見るごとく、本書はインダス文明にまつわる「神話」を見直そうとしている。
 神話というのは、「インダス文明は中央集権的な大河文明だ」という一般常識だ。
 この一般常識は他の三大文明からの類推による。
 他の文明に比べインダス文明の研究は遅れている。そして、インダス文明で最も著名な遺跡のモヘンジョダロとハラッパがインダス川の近傍にあることで、そうした常識が形作られたわけだ。

 ところが、近年の研究によると、インダス文明は、大河文明でも、中央集権でもないらしい。
 確かにモヘンジョダロのようにインダス川に依存した都市もあるが、河畔にない遺跡の方が多い。
 過半の都市が、大河のない内陸部や海辺に位置している。

 また、他文明と違い、強大な権力を持った支配者の影が見えてこない。
 武器や戦争の形跡も見られない。
 ゆえに、中央集権というより、「地域共同体が交易などを通じて作り上げたゆるやかなネットワーク共同体」なのだ。

 最近の植物考古学的な研究で面白いことが明らかになった。
 歯垢からウコンとショウガが検出されたのだ。カレーの起源がこの辺にあるという。
 また、主食の穀類が、従来考えられていた大麦や小麦というより、アワやキビという雑穀であった可能性がある。

 緊張を孕む印パ国境に展開するという地理的な困難や、インダス文字がまだ解読されていないこともあり、他文明と比べ、まだまだ謎の多い文明だ。
 今後の研究でまた見直しが起こる可能性も大きい。
 面白いことに、インドのヒンドゥー至上主義者は、インダス文明の担い手をヒンドゥー人にしたいらしい。かつてBJP(インド人民党)の政権下では、インド考古学会でもそうしたヒンドゥー至上主義的な風潮が強まったという。今年の総選挙でBJPの政権復帰も予測される中、ちと気になるところである。ナショナリズムというのはどこも困りものだ。
 国際的な考古学会では、現在、インダス文明の担い手は南インドのドラヴィダ系の可能性が強いと言われている。ヒンドゥー人(アーリア系)は、インダス文明の担い手であるどころか、破壊者ですらないようだ。

 では、インダス文明はどのような経緯で衰退したのか。
 それについては本書では触れられず、同著者の編集による他書『インダス 南アジアの基層世界を探る』で詳述されているらしい。さっそく注文してしまった。
 ともあれ、インドに関心を寄せる人にはおススメの本だ。
インドで軽トラを買う
今、インド。
数年前からこちらでも軽トラっぽいのが走り始めた。
弊社のインド法人でも一台必要となり、昨日、買いに行く。

インド自動車業界最大手はスズキなんだが、残念ながらキャリィは出していない。
ホンダや日産にもない。
軽トラを出しているのは、インド国産大手のマヒンドラ自動車とタタ自動車だけみたい。
日本の軽トラより一回り大きく、インドではチョタハティ(小さな象)と呼ばれている。

インド人スタッフ三名ともども、マヒンドラとタタのショールームに出かける。
試乗した後、マヒンドラのに決める。
ディーゼル900ccで、燃費は18-20kmだという。
まぁ、キャリィなんかと比べると走行性能はイマイチなんだが、頑丈そう。
諸経費・荷台改造込みで、60万ちょっと。
成約後、記念動画を撮っていたら、インド人のおじさんに「ブータン人?」と聞かれた。

ショールームの前を荷馬車が一台通って行った。
一瞬、弊社はあんなのでも良いかと思ったが、インド人男子三名の嬉しそうな様子を前に、ぐっと思いとどまる。

そこで一句:

小象の前を軽やか荷馬車往く
天竺古寺巡礼・その1 ミナクシ寺院
インド出張の合間に寺詣りをする。
最初は南インドの大寺院、タミルナド州のミナクシ寺院。
同州第二の古都マドライの中心に鎮座する大刹。インドでも最大級のヒンドゥー寺院だ。
東西南北に聳え立つ極彩色のゴープラム(楼門)が圧倒的。
門の脇にある下足所に靴を預けて、裸足で広大な境内に入る。
石造りの様々な建物があって、よくわけがわからない。
あちこちにいろんな神々が祀られ、善男善女が祈りを捧げている。
大きな池があったり、ミュージアムがあったり、象がいたり。
供物屋があったり、土産物屋があったり、軽食スタンドがあったり。
ただし、シヴァ神の祀られるという本堂にはヒンドゥー教徒以外立入禁止。
インド人の列に並んでみたが、すぐに排除される。

まあ、異教徒が本堂内陣に立ち入っても別に大した意味はない。
オレもティルバンナマライのアルナチャレシュワラ寺院やグワハティのカマキヤ寺院といった名刹の内陣に入ってみたが、なんか脂っこい洞窟探検みたいなもので、特に御利益も期待できないであろう。インド人の邪魔になるだけだ。
ヒンドゥー寺院もいろいろで、異教徒でも内陣まで入れるものから、ブバネシュワルのジャガンナート寺院みたいに境内にすら入れないものもある。

ミナクシ寺院について言えば、いちばん楽しいのは寺の周りだろうな。
正方形の敷地を取り囲んで、石畳のプロムナードみたいになっている。
いろんな店がずーっと連なって、インド中から来た参拝客がそぞろ歩く。
歩き疲れた足を休め、屹立するゴープラムを目の前に、「すげーなー」と言いながら南インドコーヒーをすするのが良い。
あの独特なミルクコーヒーはクセになるのである。

ちなみに、個人的に言うと、わが乏しきヒンドゥー寺院参拝歴の中で一番のおススメは、前述のアルナチャレシュワラ寺院であろうな。ラマナゆかりの寺であることもあるが、本堂裏手の広場に座り、ご神体のアルナチャラ山を望みながら、流れるマントラに身を委ねるのが良い。
寺院周りのプロムナードは無いが。