今年気づいたんだけれど、晴れ空のもと、かなり歌の上手な鳥がいる。
10音節くらいの美声で、やや複雑な、下り調子の歌を歌う。
これが非常に気になる。
日本の拙宅もやはり山里だが、鳥の囀りはだいたい聞き分けられる。
しかしインドではお手上げだ。
知らないものばっかり。
地味な鳥ならどうでも良いが、美声がわからないとなると、これはじつに口惜しい。
鳥に詳しそうなインド人も周りに居ないし。
ウグイスならホーホケキョと聞きなすんだが、異国の鳥だと聞きなしもわからない。
この鳥、あえて言うと、ラフマニノフ交響曲第二番第二楽章の冒頭だな。
これはかつて信越放送ニュースのテーマ曲だったから、長野県民には意外に知られているのだ。
元はというとグレゴリオ聖歌《怒りの日》のモチーフなんだと。
さてここに便利な助っ人がある。
Picture Birdというスマホアプリ。鳥の囀りを判定してくれる。
ただタイミングが難しいのだな。
鳥はいつ鳴くかわからないし、アプリをセットするまで鳴き続けるかわからないし、遠いと判定できないし、他の鳥が鳴いてると誤判定するし、いろいろなんだが、そうした幾多の困難を乗り越えて、一昨日、ついに判定が下った。
ノドジロオウギビタキ。
う〜ん、なんという茫漠たる名前。
声はすれども、なかなか姿は見えない。
と思っていたんだが、今朝、屋上で瞑想に耽っていると、目の前の木にそれが一羽飛んできた。
梢を忙しく飛び回り、二節ほど歌って、飛び去って行った。
確かに、ノドに白い斑が入っていて、尾が扇っぽい。
今朝はもうひとつ、上り調子の美声鳥がいて、首尾良く判定したところ、ハイガシラヒタキ。
これもひたすらグレーな名前だ。
きっと頭が灰色なんだろう。
しかし、日本で言うと、ジョウビタキとか、キビタキとか、ルリビタキとか⋯
ヒタキというのは、国を問わず人の耳目を楽しませてくれる存在だ。