『インダス文明の謎』
2014.01.02 Thursday
長田俊樹著。副題は『古代文明神話を見直す』。
インダス文明と言えば、メソポタミア、エジプト、黄河に並ぶ古代「四大文明」だ。
ただ、他の三大文明に比べると、やや影が薄い。
著者は総合地球環境学研究所によるインダス・プロジェクトのリーダー。
同プロジェクトは日本で初めてインダス文明の遺跡発掘を手懸けている。
副題に見るごとく、本書はインダス文明にまつわる「神話」を見直そうとしている。
神話というのは、「インダス文明は中央集権的な大河文明だ」という一般常識だ。
この一般常識は他の三大文明からの類推による。
他の文明に比べインダス文明の研究は遅れている。そして、インダス文明で最も著名な遺跡のモヘンジョダロとハラッパがインダス川の近傍にあることで、そうした常識が形作られたわけだ。
ところが、近年の研究によると、インダス文明は、大河文明でも、中央集権でもないらしい。
確かにモヘンジョダロのようにインダス川に依存した都市もあるが、河畔にない遺跡の方が多い。
過半の都市が、大河のない内陸部や海辺に位置している。
また、他文明と違い、強大な権力を持った支配者の影が見えてこない。
武器や戦争の形跡も見られない。
ゆえに、中央集権というより、「地域共同体が交易などを通じて作り上げたゆるやかなネットワーク共同体」なのだ。
最近の植物考古学的な研究で面白いことが明らかになった。
歯垢からウコンとショウガが検出されたのだ。カレーの起源がこの辺にあるという。
また、主食の穀類が、従来考えられていた大麦や小麦というより、アワやキビという雑穀であった可能性がある。
緊張を孕む印パ国境に展開するという地理的な困難や、インダス文字がまだ解読されていないこともあり、他文明と比べ、まだまだ謎の多い文明だ。
今後の研究でまた見直しが起こる可能性も大きい。
面白いことに、インドのヒンドゥー至上主義者は、インダス文明の担い手をヒンドゥー人にしたいらしい。かつてBJP(インド人民党)の政権下では、インド考古学会でもそうしたヒンドゥー至上主義的な風潮が強まったという。今年の総選挙でBJPの政権復帰も予測される中、ちと気になるところである。ナショナリズムというのはどこも困りものだ。
国際的な考古学会では、現在、インダス文明の担い手は南インドのドラヴィダ系の可能性が強いと言われている。ヒンドゥー人(アーリア系)は、インダス文明の担い手であるどころか、破壊者ですらないようだ。
では、インダス文明はどのような経緯で衰退したのか。
それについては本書では触れられず、同著者の編集による他書『インダス 南アジアの基層世界を探る』で詳述されているらしい。さっそく注文してしまった。
ともあれ、インドに関心を寄せる人にはおススメの本だ。
インダス文明と言えば、メソポタミア、エジプト、黄河に並ぶ古代「四大文明」だ。
ただ、他の三大文明に比べると、やや影が薄い。
著者は総合地球環境学研究所によるインダス・プロジェクトのリーダー。
同プロジェクトは日本で初めてインダス文明の遺跡発掘を手懸けている。
副題に見るごとく、本書はインダス文明にまつわる「神話」を見直そうとしている。
神話というのは、「インダス文明は中央集権的な大河文明だ」という一般常識だ。
この一般常識は他の三大文明からの類推による。
他の文明に比べインダス文明の研究は遅れている。そして、インダス文明で最も著名な遺跡のモヘンジョダロとハラッパがインダス川の近傍にあることで、そうした常識が形作られたわけだ。
ところが、近年の研究によると、インダス文明は、大河文明でも、中央集権でもないらしい。
確かにモヘンジョダロのようにインダス川に依存した都市もあるが、河畔にない遺跡の方が多い。
過半の都市が、大河のない内陸部や海辺に位置している。
また、他文明と違い、強大な権力を持った支配者の影が見えてこない。
武器や戦争の形跡も見られない。
ゆえに、中央集権というより、「地域共同体が交易などを通じて作り上げたゆるやかなネットワーク共同体」なのだ。
最近の植物考古学的な研究で面白いことが明らかになった。
歯垢からウコンとショウガが検出されたのだ。カレーの起源がこの辺にあるという。
また、主食の穀類が、従来考えられていた大麦や小麦というより、アワやキビという雑穀であった可能性がある。
緊張を孕む印パ国境に展開するという地理的な困難や、インダス文字がまだ解読されていないこともあり、他文明と比べ、まだまだ謎の多い文明だ。
今後の研究でまた見直しが起こる可能性も大きい。
面白いことに、インドのヒンドゥー至上主義者は、インダス文明の担い手をヒンドゥー人にしたいらしい。かつてBJP(インド人民党)の政権下では、インド考古学会でもそうしたヒンドゥー至上主義的な風潮が強まったという。今年の総選挙でBJPの政権復帰も予測される中、ちと気になるところである。ナショナリズムというのはどこも困りものだ。
国際的な考古学会では、現在、インダス文明の担い手は南インドのドラヴィダ系の可能性が強いと言われている。ヒンドゥー人(アーリア系)は、インダス文明の担い手であるどころか、破壊者ですらないようだ。
では、インダス文明はどのような経緯で衰退したのか。
それについては本書では触れられず、同著者の編集による他書『インダス 南アジアの基層世界を探る』で詳述されているらしい。さっそく注文してしまった。
ともあれ、インドに関心を寄せる人にはおススメの本だ。
とても興味深いです。調べてみよっと。インダス文明の遺跡にはシヴァリンガムも見つかららしいからね。
ぜひ調べてみてください。